海外Q&Aサイトの「第2次大戦中のプロパガンダで日本人はアメリカ人をどう描いていたの?」という質問から、回答をご紹介。


■回答者
日本の戦時中の連合国に対するプロパガンダ的絵画を、簡単な説明つきで見て行こう。

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雑誌『漫画』1942年1月に掲載された池田永治の絵。太平洋戦争の勃発に対する反応だ。A=アメリカ、B=イギリス、C=中国、D=オランダ。アメリカとイギリスはチンピラとして描かれている。中国は蒋介石の顔をして短い尻尾が生えている。またアメリカが被っている王冠のJの文字に注意してほしい。ユダヤ人(Jewish)を表すもので、日本人はアメリカの貪欲さと金権政治の象徴と見なしていた。オランダが木靴で表現されていることにも注目。

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1942年中頃に『漫画』に掲載された絵。アメリカ、イギリス、オランダは、抑圧された(褐色の肌の)アジア人を足下に踏みつける、ナポレオン的な誇大妄想狂として描かれている。

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『米英頭方追放』と題された1942年5月15日付のカートゥーン。櫛ですき取られるフケが、贅沢、利己心、享楽主義、自由主義、唯物論、拝金主義、個人主義・・・といった西洋の退廃と道徳的退化と同一視されている。このカートゥーンは戦時中の日本が純粋さと純化にこだわっていたことの反映だ。

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1942年1月出版の「馬脚狸尾」と題された絵。日本の航空機が、それぞれチャーチルとルーズベルトで表されるイギリスとアメリカの本性を暴いている。チャーチルの臀部は狡猾さと裏切りの象徴である狸のそれであり、衣服には植民地での虐殺を表す頭蓋骨が描かれている。ルーズベルトの臀部は馬のそれだ。衣服には貪欲さを表すドルの印が描かれ、手にした短剣は征服を表す。

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男性はルーズベルト。女性はチャーチル。子供は蒋介石。二人は鎖で繋がれ、戦争と植民地主義を表す虐殺された死体の野で(贖罪の)祈りを捧げている。白旗の結ばれた熊手は降伏を意味する。

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1942年1月出版、小野佐世男の「嘆きの自由の女神」。ルーズベルトは「独裁」の棍棒を握りながら「民主主義」のスローガンを振っており、古典的な悪鬼(demon)の姿をしている。アメリカの退廃が自由の女神の冠の上の人々によって表されている:酒盛りをする「反戦」的な水兵、拘束された「戦争」の人物、「ストライキ」のプラカードを振り回して叫ぶ労働者。道化風の「ユダヤ人」はアメリカ国旗に偽装した利益の風船を膨らませている。

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悪鬼じみた敵の描写。角の生えたルーズベルトは、破壊を撒き散らす大砲を表した指で世界平和を破壊する者として描かれている。

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ルーズベルトが日本人を殺そうと必死になる悪鬼として描かれている。悪鬼は骨を口に咥え、首には日本人の頭蓋骨でできた首飾りをしている。この絵は1944年10月に、日本人に対する連合国の残虐行為のニュースへの反応に登場した。

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1944年10月に登場した絵。ルーズベルトとチャーチルを、富士山の見えるところで放蕩にふけるグロテスクな悪鬼として描いている。右上隅の文章は「鬼畜米英」を殺せという激励。

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日本により磔刑にされたルーズベルト。

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日本の正義の銃剣に腹を刺されるチャーチル。1942年2月出版、見出しには「インドよ今こそ起ち上る時だ!!」と書いてある。銃剣に結ばれた国旗には「大東亜聖戦」の標語が記されている。チャーチルの頭の小さな角が悪鬼を表している。

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『漫画』1944年7月に掲載された絵で、戦争が決定的に不利になったことを受け、日本人の自暴自棄の高まりを明らかにしている。題名は「増産で敵を殺せ」、彼らの憎むアメリカの航空兵が、正義の刃の生えた稲穂に串刺しにされる様子を示している。

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民話と戦時プロパガンダが結びついたもの。日本の戦時中の使命が、遠くの地から来た恐ろしい悪鬼を犬と雉と猿の助けで征服した、神聖な生まれの桃太郎と関連付けられている。旗印には「大東亜共栄圏樹立」と書かれ、桃太郎の羽織の襟は彼が「世界一」だと(つまり日本がNo.1だと)名乗っている。ここでも悪鬼はチャーチルとルーズベルトの顔をしている。

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このユーモラスなボクシングの一連の場面は、桃太郎の民話の現代版だ。蒋介石はロープにもたれている。締まりのないルーズベルトと年取ったチャーチルが蒋介石を助けに入るが、若く高潔で旭日の鉢巻をした模範的な桃太郎タイプの日本の象徴によって容赦なく打ち負かされる。最後のコマではアメリカ黒人が日本の勝利に力強く喝采し、一方白人はショックを受け落胆している。

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「南方の人」と題されたこの絵は、西洋の支配下にあったアジアと日本による解放後のアジアを描いた「ビフォー・アフター」の一部として、1942年12月の『大阪パック』に掲載された。これは日本人が他のアジア人に対してさまざまなやり方で優越性を表明していたことを明らかにしている。よく知られた浄化の太陽(「共栄圏」と書かれている)の光線がインドネシアに降り注ぎ、オランダを追い出している。一方日本人は土着民の手を、間違いなく家長的な手で握りしめている(文字通り神の手だ)。日本の手は褐色の肌の土着民よりはるかに明るい色だし、上着の袖が文明の証拠であるのに対して南方の人は肉体労働者で、半裸であり従って半文明的であることを暗示している。人種や国や文化として劣等な土着民の「ふさわしい場所」だけでなく、大東亜共栄圏の中での労働の分割によって土着民の従属的な役割も明瞭にされている。


面白かったかい? 日本の戦時中の敵の描き方と、アメリカの戦時中の敵の描き方の間の一つの目立った違いは、日本による連合国の描き方のほうが滑稽で悪意がなく、そのためアメリカ人による日本人の描写ほど強いレイシズムの印象を作り出していないことだ。アメリカとイギリスは、ルーズベルトとチャーチルの顔をしたさまざまな程度のグロテスクさの悪鬼として滑稽に描かれており、これは人種的な劣等性という印象を一切呼び起こさない。対照的に、アメリカ人による日本人の描写ははるかに悪意に満ちており、人種的な劣等性の印象をはるかに強く呼び起こす。猿、ネズミ、つり眼等々・・・

この理由の一つは、日本人は進歩と西洋式の近代性がヨーロッパ人とアメリカ人に学んだ結果だということを鋭敏に意識していたことだ。このため日本人とヨーロッパ人の関係は師弟関係で、徒弟は低い地位にある。従って日本人には、アメリカ人が日本人を描いたようには、ヨーロッパ人とアメリカ人を劣ったものとして描くことができなかった。

第二に、日本人はヨーロッパ人と違って、植民地での経験がはるかに少なかった。ヨーロッパ人はアフリカ人やアメリカの原住民に遭遇し、優越したテクノロジーで服従させ、そこで得た優越感を西洋の帝国主義的レイシズムの根底に据えたが、一方日本には劣等人種なるものに遭遇する歴史がなかった(ヨーロッパの帝国主義がそれまで1世紀以上にわたって続けてきたように、朝鮮を支配し中国に勝利するまでは)。他の人々と接する経験がなかったため、日本語には劣等人種への侮蔑を表現するのに必要な語彙、例えばヨーロッパで非白人に猿(monkey)・類人猿(ape)・人類より劣ったものという烙印を押すような語彙が存在しなかった。

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日本人は世界が自己と他者から成るものとして見ていた。自己=日本人と他者=日本人以外だ(この規則は日本の社会階層にも適用される)。面白いのは、他者がその質によって人間と見なされたり悪鬼と見なされたりすることだ。他者が日本に有益なものをもたらせば、その人は人間、または奇妙な神のようなものと見なされた。そうでなければ悪鬼と見なされる(そして状況によって、悪鬼も有益であったり破壊的であったりする)。ヨーロッパ人がテクノロジーやその他のクールなものを日本に紹介した時は好意的に見られていた。しかし国内問題に干渉したり(例えば日本人をキリスト教に改宗させようとして、社会の安定性と既存の階層を危機に晒す等)、日本の国益にとっての脅威になると(例えばペリー提督がやったようなこと)、破壊的な悪鬼として認識された。

日本のプロパガンダがヨーロッパの連合国を描く時、猿やネズミではなくさまざまな姿の悪鬼が用いられることが目立って多いのは、このためだ。


ソース:ジョン・ダワー『容赦なき戦争―太平洋戦争における人種差別』(※→Amazon



翻訳元:Quora



指先から大砲を撃つとか完全にロボ。



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