海外Q&Aサイトの「ESL(※第二言語としての英語)の教師として、日本の欠陥のある英語教育にどう対処してる?」という質問から、回答をご紹介。


■回答者1(フィリピン)
日本の英語教育が日本人の役に立ってこなかったという事実は、よく論じられるテーマだ。外国人やネイティブスピーカーに来てもらって、ちょっとしたセレブみたいな扱いをするだけのお金のある国が、実際に英語を使ったり話したりするのには大した進歩をしてこなかったというのは、不思議なことだ。

何が悪いのかについての議論には終わりがないだろう。この質問は、何が悪いのかではなくて、何ができるかに焦点を当てているので気に入った。

背景説明として、政府が主導する(または少なくとも開始した)外国語指導助手(ALT)の制度は、若い外国人に来日して日本の国際化に貢献してもらうため、1987年に始まった。このミッションからして、そもそもピントが合っていなかったのではないかと思う。目的は日本人の英語のスキルを向上することなのか、外国人と交流することなのか? 英語が話せて学位を持っていて、英語を母語とする国の出身の人なら誰でも受け入れるという事実からも、目的はあまりはっきりしない。

とはいえ、現状は現状として、私がこれに対処しようとしてやっている事はいくつかある:

1. 能力を発揮しようと努力し、改善し続けること。ほとんどの場合、私たちは手に負えない事態についてくよくよしすぎる。しかしやるべきことに最善を尽くせば、私たちには存在意義が生まれる。

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2. 批判されたりクビになることを避けるために、最小限の努力しかしないことに甘んじている人たちも、私はたくさん会ったし、一緒に働いたことがある。そういう人たちは仕事は維持できるかもしれないが、自分にも日本人にも役に立ってはいない。努力を怠ることによって、上達させられたかもしれないスキルを自分から奪っているのだし、子どもたちからも上達できる機会を奪っている。

3. 英語を上手に教える能力のある、またはその可能性のある日本人の教師を探す。日本人は英語力を向上させようと強い決意をしていて、学習に対してオープンなのだから、ESLの教師は日本人の教師と一緒に働いて、ESLの技術と原則を教え励ますことで、大きな影響力をもつことができる。こういう教師は、子供たちが英語のスキルを伸ばす気にさせるのに自分がどれだけ大きな役割を担っているか理解すると、自分の仕事に一層やる気を起こす。

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残念なことに、英語がよくできる日本人の教師の多くは、同僚の教師やその他の権威のある人たちから、その能力を恐れていじめられることがある。有能な人に対して権限を与えるどころか、のけ者にされないよう怖がらせて卑屈で平凡にさせるのだから、これは非常に悲しいことだ。

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4. 授業に独自の活動を導入し、生徒たちには英語でコミュニケーションしようという情熱のある日本人と外国人の仲間たちと交わる機会のあるスピーチコンテストのようなイベントに参加するよう促す。

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こういう子供たちは、英語をマスターするのがどれほど楽しくて実りあることか分かると、自分自身が英語の教師になったり、日本の英語教育の改善を提唱してくれるかも知れない。



■回答者2(アメリカ)
私の場合、求められた以上のことをして、必要とされる以上の能力を身につけた。特に、日本人についての科学的な研究には多くの知識を得た。この戦略がどういう結果を生んだか、語らせてほしい。

まず、私は日本人の母との関係をもっとよくするためにその文化を学ぼうと思って、高校を卒業すると日本に来た。当時は横須賀の海軍基地に駐留していた。それから海軍をやめて米国の大学に通って、日本語の学士号を取った。卒業後すぐに日本に戻って英語を教えた。何年も教えたが、状況は変わらなかった。日本人は英語を学ばない。忘れないでほしいが、私が日本にいる最大の動機は母との関係を改善することだ。しかし、そっちも良くなっていなかった。ここには何か関係があるように思えた。今まで日本の文化には非常に親しみが深かったし、それをもっと掘り下げたいと思っていた。ある日、日本人の妻が、日本語で書かれた英語学習の本を教えてくれた。

独特なものだった。心理学という単語は一度も使われていないが、心理学的なアプローチをとっているように思った。これは本当に私の興味を惹いた。もちろん、心理学的な観点から英語を学ぶというのはなくはない。しかしそれは頭の片隅にとどめておいて、心理学的なアプローチを用いた英語学習の本を探し始めた。どうやら、これが取るべき道だと本能が告げていた。

日本人に英語を教える際に心理学的なアプローチを用いようとして私がくぐり抜けた多くの奮闘の詳細については飛ばして語ると、2014年にカペラ大学(※米国ミネソタ州の大学)の心理学修士課程を修了した。専攻は:(1)教育心理学、および、私の最大の関心として(2)日本人の児童の発達だ。

職業上の肩書は依然としてESL(AET)の教師だが、私はブルームの分類法に基づいたアメリカ式の批判的思考を日本人に教える資格を有する人間として自分を売り込んでいる。パナソニック教育財団もカリキュラムのベースにはブルームの分類法を使っている。関連する企業と組織はこの批判的思考のモデルを日本に採り入れることを十分提唱はしてこなかったとはいえ、ブルームの分類法は日本になじまない概念ではない。

泰山 裕 | パナソニック教育財団の先導的実践研究助成

参考:
「何を持って学習できたと判断するのか、認知プロセス面でそれを定義づけたのがブルームの教育目標分類です。」
ブルームの分類法 | ラーニングジャーナル

実際、教育心理学の知識を使うのは昨年が初めてだった。高校3年の生徒200人に、ブルームの分類法に基づいて英語の小論文の書き方を教える機会があった。間違いもいろいろしたが、素晴らしい学びの経験だった。今年はAETとして中学校に行って、教育心理学の修士課程で身につけたスキルを使い、日本人の教師が英会話を教えるのにアクティブラーニングの概念を用いるのを支援している。ごく最近気づくようになったのだが、自尊心というものは教えられる必要があるものだ。そこで今日、以下の本を買ってきた。ジェリー・ミンチントン著、タイトルは『うまくいっている人の考え方』(※→Amazon)。自尊心を高める方法についての本だ。信じられないことに100万部売れた。

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結論として、私は「ESLの教師として、日本の欠陥のある英語教育に」心理学的な、特に教育心理学的なアプローチを通じて対処している。ちなみに、日本人の母との関係は今ではきわめて良好だ。西洋の文化とは正反対に位置する、深遠で複雑な文化に対処する方法を教えてくれた科学的な心理学の研究に、私が多大な感謝をしていることは言うまでもない。日本人の母親に育てられたというだけでは、これは分からなかったことだ。



翻訳元:Quora



たまに英語の授業に外国人が来て英語で喋らせようとするアレがほんと苦手でした。



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