海外Q&Aサイトの「1853年に米国が日本を開国する代わりに植民地化していたらどうなっていたかな?」という質問から、回答をご紹介。


■回答者
これは歴史から日本をごっそり取り除くことになるので、きわめて興味深い質問だ。

そこで、日本が「開国」を拒んで、数年後に米国が侵略したとしよう。

1856年の世界地図

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主に東アジアに注目して行くが、普通の歴史的変化はどのみち発生するだろう。

日本はアメリカの統治下にあり、アメリカが自分の潜在的なライバルを強くする理由は何もないのだから、日本はいまだに工業化しておらず、今後もその見込みはない。初めに変化が生じるのは1904年、われわれの世界で日露戦争が始まったときだ。日本は発展もしていないし動機もないので、この戦争は起こらないだろう。ロシアが日本と争っていないので、満州と朝鮮は、おそらくわれわれの年表の10年後、ロシアに取られる。

1900年の世界地図

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さて日露戦争の最も重要な影響は、それがいかに他のヨーロッパ人たちのロシアに対する見方を変えたかという点だ。ロシアは日本に勝つことができず、またボスニアをオーストリア人に奪われるままなり、もしセルビアについても同じことをすれば、バルカン半島での威信と影響力をすべて失うように思われていた。

しかしこちらの年表では、日本に対する敗北は起こらず、ロシアは自分の力に余裕がある。出来事はまだ同じように進むと思うが、ただし人々がロシアを高く評価しているということは記憶に値する。このためドイツのシュリーフェン・プランには、ほぼ変更がないだろう。

参考:
「シュリーフェン・プラン(独: Schlieffen-Plan)は、19世紀後期のドイツ帝国の軍人アルフレート・フォン・シュリーフェンによって1905年に立案され、修正された形で第一次世界大戦の始めにドイツ軍によって適用された西部戦線におけるドイツ軍の対フランス侵攻作戦計画である。」
シュリーフェン・プラン – Wikipedia

そのため全体として、これによって第1次大戦に大きな変化はないが、しかし日本は地図の右に見えるドイツの島々の「環」に侵攻し、占領する。われわれの世界ではイギリスがこれらの島を占領し、戦後に併合する。アメリカは参戦後、日本を白軍に補給するための領土として利用するだろうが、とはいうものの、これによってロシアの内戦の結果が変わるとは思わない。

そのためヴェルサイユ条約が締結されると、われわれの年表に非常に似た状況になるが、ただし日本は完全に無関係で、ヨーロッパ人の目にはタイのような国々と、また政治的な観点からはフィリピン(同じく米国が西太平洋で支配する、人口の多い巨大な列島)のような国々と、同じように見える。

1930年の世界地図

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第1次大戦はおおむね影響を受けなかったが、第2次大戦では日本はずっと大きな役割を果たし、確実に戦況を変化させることになる。

1937年(われわれの年表で日本が中国を侵略したとき)には、何も起こらない。ドイツはまだ他のヨーロッパ諸国を強引に押し切ってソ連を侵略することができるが、アメリカは侵略も攻撃もされることがない。ルーズベルトとその取り巻き連中の意思に反し、米国の世論は反戦だ。中国は、ソ連・イギリス・フランスがそれぞれ傀儡国家とその領土をもって取り囲むため、ヨーロッパの衝突にはるかに深く関与することになる。

ソ連はドイツを打ち負かすが、それにはもう1年余計にかかるかもしれない。イギリスは縮小版のD-デイ(※ノルマンディー上陸作戦)を実施し西欧の一部を取るかもしれない。

1950年(冷戦期)の世界地図

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アメリカは第2次大戦で目覚めなければ、それに続く冷戦で目を覚ますだろう。

日本については、超大国になることもなく、フィリピンのような第三世界の比較的貧しい国にとどまる。日本は第2次大戦でごくわずかしか参加しなかったので、東アジアでの大量虐殺の責任を負うこともなく、おそらくわれわれの世界におけるよりもずっとナショナリズムの強い国になっているだろう。

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↑コメント1
付け加えておくと、米国は第2次大戦に参戦しないだろうから、おそらくドイツが最初に原子爆弾を開発し、これにより戦争で優位に立ち、米国以外の連合国を打ち負かせるだろう。その結果ドイツは米国の代わりに世界の超大国になり、歴史は完全に変わるだろう。

共産主義はヨーロッパ、アジア、そしてキューバに広まらないだろう。つまり朝鮮戦争とベトナム戦争はおそらく起こらず、キューバのミサイル危機も生じることがなく、もしドイツと米国との間で冷戦が発生したとすると、すべてが想像を絶するほど違った状況になっていただろう。

植民地に関して言うと、ドイツはイギリス・フランス・ポルトガルから、アジア・アフリカ・ラテンアメリカの植民地を奪うだろう。これはつまり、英語が国際語としてドイツ語に取って代わることはないという事だ。したがってドイツ語はおそらく世界でもっとも話される言語になり、英国や米国のような国はドイツ語を第2言語として学ばなければならない。今のこの世界はまったく異なったものになっていただろう。


↑回答者
面白い。ただ、アメリカ人が原子爆弾を手に入れることがなく、使うこともないという点は同意するが、ソ連が領土を奪還し始める前にドイツ人が原子爆弾を開発できていたとは思わない。


↑コメント2
ついでに言うと、この時点で冷戦が起こることはないだろう。アメリカは超大国にはなっていなくて、失業率は依然きわめて高いままだろう。米国が不況から抜け出した原因が第2次大戦だったことを忘れずに。そのうえ、米国は核兵器を入手も使用もせず、このためロシアが(おそらくは)核兵器を独占することになる。

これ以後、米国はイギリス、フランス、ロシア(この並行世界での核保有国ビッグ3)の間で中立派となって、冷戦にまったく影響を受けず、第一次および第二次戦略兵器削減条約も締結されることがないだろう。イギリスとフランスは拡大するソ連の危機を鋭く感じとり、できたばかりの核兵器の備蓄を、自国の利益を犠牲にしてでも使用し、その結果ヨーロッパ大陸は全面的に壊滅する可能性が高くなるだろう。


↑回答者
アメリカは参戦しなくてもすでに上手くやっていたので、やはり超大国になっていたと思う。参戦は士気を高めただけだ。


↑コメント2
完全に正しいかは分からないが、理由はこうだ。第2次大戦中には、戦時国債や勝利税(Victory Tax)といった形で、国民からの激励と莫大な税収があった。加えて急激な増産、研究開発への支出、戦争遂行に利害関係をもつ工場と起業家の融資のおかげで、失業率は1年で15%とかそれぐらい減少した。

さらに、第2次大戦前のアメリカ人のこまやかな感受性と自己イメージからするに、米国が核爆弾を開発することは許さなかっただろうし(私たちが巻き添え被害を避けるためにノルデン爆撃照準器を発明したことを忘れないでほしい。どれほど効き目があったかはともかく)、戦争がなければ資金もないから、核爆弾は開発されなかっただろう。

参考:
「ノルデン爆撃照準器(ノルデンばくげきしょうじゅんき、英:Norden bombsight)は、第二次世界大戦中、アメリカ陸軍航空軍(USAAF)にて採用されていた、爆撃機の搭乗員が正確に爆弾を投下できる様に援助するための照準器(Bombsight)である。」
ノルデン爆撃照準器 - Wikipedia


↑回答者
アメリカ経済は参戦の2年前に回復を始めていた。狂ったように生産はしていたが、自分たちで使っていなかったんだ。すでに供給はあり、需要もかつてないほどに増大していたので、大恐慌から抜け出すために世界大戦に参戦する必要はなかった。

ただ、核爆弾を開発しなかっただろうというのは確かだ。


↑コメント3
「第三世界」という言葉はもとの意味を失っている。1950年代、冷戦中に作られた言葉だ。西側ブロックが「第一世界」、共産主義ブロックが「第二世界」で、政治的にどちらにも付いていないブロック ― ブラジルやインドのような、第一・第二世界よりも貧しい多くの国が含まれる ― が「第三世界」と呼ばれた。それがどうしたわけか、単に貧しい、発展途上国を意味するものになった。


↑コメント4
君が見逃していると思うのは、米国が参戦しなければドイツは核兵器の開発に費やす時間がもっとあったということで、また戦争遂行に必要な原材料ももっと手に入ったので、世界は君の見通しよりももっと大きく変わっていた可能性がある。結局は大きな「if」ということになるが。



翻訳元:Quora



歴史のifは語る人の願望が入り込むのが面白い気がします。



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文庫 日本開国: アメリカがペリー艦隊を派遣した本当の理由 (草思社文庫)



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