海外Q&Aサイトの「中国と日本のお茶文化の大きな違いって何?」という質問から、回答をご紹介。


■回答者1(Robin Daverman アメリカ)
まあ最大の違いは、日本には本物の茶道(tea ceremony)があるということだ。中国にはない。観光客向けのトラップ以外。言ってみれば、米国ならワイン通っぷりをひけらかすことができるが、フランスではできない、みたいなものだ。フランスじゃ5歳の頃からワインを飲んでるわけで、だから何だって話。

そしてこれは、つまるところこの植物、Camellia sinensis(※チャノキ)に行きつく。

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これが茶の木だ。熱帯/亜熱帯性の植物。暑すぎても寒すぎてもいけない。湿気が多すぎても、乾燥しすぎていてもいけない。日が照りすぎても、曇りすぎてもいけない。高地すぎても低地すぎても・・・基本、雪も氷もない、雨は多いけれどすぐに乾く、日当たりは良いけれど強すぎない、肥沃だけれど肥えすぎてはいない、霧が多くて多湿で酸性の土壌の山腹で育つ・・・そしてこれは日本の自然環境ではない! はるか北方に適しているものだ。

そのため日本のお茶は神戸牛のようなものだ ― 音楽を聴かせてマッサージをしたり、何やかやといったやつだ。冬には保護し、夏には日よけをし、1日に最大で10ポンド(※約4.5kg)を手摘みし、等々。これを飲むときには精妙な儀式がある。オーケー。まあそれはいい。

ところが、中国の土着の茶はこれだ。中国は全世界の40%の茶を生産している。この植物は何ら特別な保護もされずに、連なる山々に雑草のように生えている。

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人々はこれをバケツで売買する。

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となると、「小さなスプーン1杯の茶葉を取るためだけの特別な道具をたくさん発明しよう」とはならない。ただの飲み物であり、調味料であるにすぎない。つまり、ローストビーフの儀式とかスパゲッティの儀式なんてものはないよな? あるいは「ローストビーフの哲学的意義と象徴」について、じっくり考えたりもしないだろう。

茶の味が好きか嫌いか? 中国はそれだけだ。



■回答者2(Dale Thomas イギリス)
日本の茶会には普通の人より多く出たことがあるけど、中国の茶会はほんの何度か(日本人のアマチュアが)やっているのを見ただけで、だから僕の知識はすごく偏っていて限られている。

僕の知っている大きな違いは以下:

中国の茶会では、乾いた茶葉をお湯で浸出させて作る。日本の茶会で飲むのは抹茶で、これはスープと言ったほうが近く、挽いて粉末にした若い茶葉(茎を含む)から作る。

日本の茶会では、茶瓶(teapot)は使わない。お茶は茶碗の中で直接作る(そして泡立てる)。日本の茶碗が中国の茶会の小さな茶碗よりずっと大きいのは、これが主な理由だ。

中国の茶会のほうが「湿って」いる。最初に陶磁器を温めるのはどちらの国も同じだが、中国の茶会では茶瓶の上からお湯を注いでお盆に流しこむ。日本の茶会ではお湯は常に器に入っていて、使ったお湯を入れる小さな茶碗が主人役のそばにきちんと隠して置いてある。

中国の茶会は通常テーブルの上でやるが、日本の茶会は(畳の)床の上でやる。テーブルでやるバージョンの日本の茶会もあるが、比較的新しいもので、通常は老人や外国人が使う。

美意識は非常に違う。日本の着物は中国の旗袍(※チャイナドレス)とは非常に違う。また手の動きと置き場所も、それぞれの文化の形式と美の感覚によって独特のものがある。

一般論として、中国の茶会は用具の完璧さに重きを置き、日本の茶会は不完全さに重きを置く。中国の茶会では通常、美しく完璧な形をした、しばしば精巧な模様入りの茶碗と茶瓶を使う。日本の侘び寂びの感覚では、いくぶん不格好で不完全な形の茶碗と道具のほうが好まれる。

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中国の茶会は、例えば謝罪、婚約を求める際、結婚、あるいはその他のお祝いといった、特定の理由について敬意を表すために行うことが多い。日本の茶会は、通常、季節の移り変わりを祝うといった精神的な理由で行われる。とはいえどちらも楽しみのためだけにやることは可能だ。

日本の茶会は沈黙したまま(瞑想として)、「茶道」を非常に重視して行うが、中国の茶会は通常それよりはカジュアルで陽気で、みんなおしゃべりをしたり笑ったりしている。もちろんいつもそうだというわけではなく、状況によっては中国の茶会が非常にフォーマルで厳粛な場合もあるし、日本の茶会が噂話の場になることもある。



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■回答者3(Min Yan 中国)
日本人は手順を重視し、中国人は味を重視する。

日本にはごく限られた種類のお茶しかなくて(片手で数えられる)、茶道で使うのは抹茶だ(中国の宋代に由来する様式)。中国の比較的南方の省ではどこでも茶がとれるが、その多様性は莫大だ。私はオフィスに浙江省産の龍井茶、雲南省産のプーアル茶と紅茶、湖南省産の黒茶、江蘇省産の碧螺春、台湾産の烏龍茶、福建省産の鉄観音と正山小種と水仙茶、さらにマレーシアとトルコのお茶も常備して飲んでいる。お茶の種類によっていろいろな道具を使う。さまざまなお茶の風味をさまざまなやり方で引き出すには、それぞれ違ったやり方が必要なんだ。

いつも思うんだけど、ある食品に関して手の込んだ文化が日本にあるという場合、それは種類の多様さがないことと、何でも突き詰めようとする日本人の傾向が原因だと思う。例えば、日本人はよくご飯を漬物で食べる。この野菜は非常に美味しい。ただ、私にはどの漬物も同じ味に思える。これとは対照的に、中国の漬物は、日本のほど美味しくはないものが多いが、多様性は莫大だ。日本の食べ物の多様性の乏しさは、中国北方と朝鮮の食べ物(これはもっと多様性がない)に匹敵する。多様性が乏しいから、日本の食べ物の職人は手の込んだ茶会のやり方や、数多くのさまざまな道具といった別の方向に向かって極端に走る。

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■回答者4(Cho Tze Yun)
多様性については回答者3が正しい。

日本のお茶文化について考えると、日本の茶会が思い浮かぶが、毎日そんなふうにお茶を飲んでいるわけではない。

日本で茶葉から入れるお茶として最も一般的なのは煎茶だ。これは日なたで育つ種類のお茶で、一方抹茶は日陰で育つ。煎茶にも、焼いた麦で風味を増したやつとか、多様な種類がある。

中国のお茶の多様性について言うと、例えば標高300、600、1200、1400、1600、2200メートルで育った烏龍茶を飲むことができる。高いほど高品質で、値段も高い。それから茶葉のさまざまな部分を使って1回のお茶を淹れる。

烏龍茶に最も適しているのは、枝の先端の2枚の葉だ。売っている烏龍茶はたいてい、先端の3枚以上の葉を使っている。下の写真にあるように先端の2枚の葉はそれよりも柔らかくて小さい葉で、烏龍茶にするには最高の品質だが、きわめて高価だ。

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参考までに言うと、標高300メートルの烏龍茶は1袋300グラムで約20ドル(※約2,200円)、一方標高1600メートルの烏龍茶は1袋150グラムで75ドル(※約8,400円)だ(450mlのマグカップに対して約5~7グラムの茶葉が必要)。ここに挙げた価格は先端の2枚の茶葉だけを使った種類のものではなく、また台湾での価格なので、他のところだとはるかに高くなっているのを目にするだろう。



■回答者5(Jason Li 中国系オーストラリア)
まず第一に、中国には単一のお茶文化というものはない。

私の生まれた福建省のお茶文化は、雲南省や紹興市(※浙江省の市)、あるいは中国北方の平野のお茶文化とは別の世界だ。

中国のすべてのお茶文化を一つにまとめて日本と比較しないといけないとしたら、私が知るところでは、最大の違いは日本のお茶文化は手順と儀式を重視すること、対して中国のお茶文化は実際の味を重視することだ。

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伝統的な日本の茶会が重点を置くのは、道具を決められた位置に注意深く配置し、正確に手順を実行するというお茶の準備自体だ。重点は準備する人のほうにあり、その過程は根底にある禅の思想を反映した芸術の一部だ。

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中国の茶会での体験は、お茶を最高の状態で出すことに向けられている。究極の喫茶体験を届けるという究極の目標に向かってお茶を選び、淹れ、濾す。重点はお茶を飲む人のほうにあり、お茶の主人は喫茶体験のための最高のお茶を作り出すことに最善を尽くす。



■回答者6(Lyle Yuan 中国)
中国にお茶文化がないというのは、ある程度までは正しい。もっと正確に言うと、中国は何千年も前にお茶を発見し、それを東洋版のコーヒーにした。老いも若きも、富者も貧者も、誰もが日常的に飲んでいる。

これが昔の日本に持ち込まれたとき、贅沢で高級なものと見なされ、日本人は飲む際に儀式を伴わなければならないものへと解釈し直した。

スターバックスでコーヒー1杯飲む前に、儀式を行う必要はないよね?

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翻訳元:Quora



良いお茶は高くてびっくりする。

2019-04-07:回答者の名前を追記




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