海外Q&Aサイトの「史上最大の音楽的才能の無駄遣いって何だったと思う? 才能のあるミュージシャンが早く引退しすぎたとか、夭逝したとか」という質問から、回答をご紹介。


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■回答者(アメリカ)
死んでもいないし悲劇的でもないが、才能を本当に無駄にした人物を選ぼう。

エディ・ヴァン・ヘイレン。

「ちょっ・・・こいつ何つった?!」

ああ、聞こえただろ:エディ・ヴァン・ヘイレンだ。

確かに、彼は世界で最も有名なリードギタリストの一人であり、ヘヴィーロックのアイコンであり、最高のロックギタリスト投票ではトップ3に40年間コンスタントにランクインしている。確かに、彼の名にちなんだバンドは、スマッシュヒットしたアルバムにヒットシングル、象徴的なビデオを連発する世界で最もビッグなバンドの1つだ。確かに、彼はこのバンドを2代に渡って導き成功させた(第3世代はそこまで成功していないが)。そして彼は、今までで最も有名なパフォーマー(少なくともその一人)の、全時代を通じて最大のヒット曲の一つに、百万ドルでギターソロを録音した(マイケル・ジャクソン「Beat it」)。

そして、それでもなお、彼はハードロックの歴史における最大の才能の無駄なんだ。

エディが'70年代に、自分のビジョンを汚されたくないという理由で、他人の音楽を一切聴かないことに異常にこだわっていたことを知っているか? ギターのボディの余分な木材を、自分が求める正にその音色が出るまで削っていたことを? 両手タッピングという世に知られないテクニックを採用し、ロックギターのメインストリームに持ち出したことを? 彼のギターテック(※楽器・機材のセッティングやチューニングをする要員)は彼の機器や楽器の設定方法を知っていたが、それでも生涯に一度たりともボスと同じ音色や音を出せはしなかったことを? この男は明らかに、紛れもなくギターの才能の塊だ。

そして彼は、ウィスキーと女と車について歌うバンドで、キャリアを棒に振った。

ああ、ああ、分かってる ― 確かに僕はAC/DCの大ファンで、彼らはウィスキーと女のことばかり歌っている(車については抜かすことが多い。アメリカンロック的だからかね)。アンガス・ヤングは最も偉大なブルーズ/ロックの表現研究家の一人だ ― そして、それだけだ。エディ・ヴァン・ヘイレンは文字通り、ロックギターというものを”再定義”した ― そのあらゆる側面をだ。音色、音量、テクニック、フレージング ― リズムプレイからユニークなリードフレージングまでの全てを、彼は向上させた。

そして彼が身を置いたのは、凡才のベーシスト(偉大なバックシンガーではあるが)、ラスベガス風感傷趣味のシンガー(その後、2代目には腕は確かだが完璧に退屈なリードシンガー)、縁故採用のドラマーの兄、そしてもちろん女についての歌の中だった。ウィスキーを飲んで。車で。

Spotifyのプレイリストにヴァン・ヘイレンの曲が出てくると、僕は普通聴いてみる。ヴァン・ヘイレンは本当に大好きだ。しかし、彼が結成できた筈の神のようなバンドを想像してみてくれ。北米とヨーロッパの演奏者、歌手、エンジニア、プロデューサーの中でも一流の人々が、この男と仕事をするために列を作っただろう。

レッド・ツェッペリンは1度のツアーごとに毎回10億ドルのオファーを受ける。なぜか? 彼らには超絶プレイと、伝統ある快楽主義的なロックの歌詞を散りばめた深遠な詞、そしてもちろん驚くべき神秘的な雰囲気が完璧に混ざり合っているからだ。一方数年前にデイヴィッド・リー・ロスが復帰したヴァン・ヘイレンがツアーに出た時は、それなりのサイズのアイスホッケー・アリーナでプレイし、金も稼いで、好評な(多少は不評な)レビューを獲得し、とまあ、そんな感じだった。

ツェッペリンがツアーを告知すると世界中が喜びにすすり泣き、多幸感が漂う。そしてエディ・ヴァン・ヘイレンは、この40年以上に渡る神に近い地位に近づく、あるいは追い越すようなバンドを結成できた筈だった。

実際に彼が選んだのは、あらゆる面で凡庸さの中に身を置くことだった。それでも僕はヴァン・ヘイレンは好きだ。実際あんなに良いんだからね。でも彼はもっと、もっと、もっとやれた筈だったんだ。

言うまでもなく、これは僕個人の、はなはだ拙い意見に過ぎない。



翻訳元:Quora



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