海外Q&Aサイトの「なぜアニメではドイツとドイツ語が好まれるの? 呪文とかで一番よく使われる言語だよね」という質問から、回答をご紹介。
■回答者1(ドイツ)
実際は、アニメに出てくる全ての形式の魔法に関して言うなら、英語が余裕でトップだ・・・が、ドイツが有利になる理由がいくつかある。
まず、ドイツは日本人の集合的な想像力の中で非常にポジティブな位置づけを維持している。
自分の過去の回答から一部引用すると:日本人は自国の文化とドイツの文化との間に、ある好意的な類縁性を感じている。例として品質への配慮、ルールを重んじること、清潔さ、時間厳守、形式尊重、謹厳実直でビジネスライクな態度・・・そして、一般に控えめで内気な振る舞いといったものが挙げられる。
これに加えて、ドイツの文化的要素、例えば哲学者、作曲家、詩人、作家等は、日本の学校のカリキュラムで非常に目立つ形で、好意的に取り上げられている。ある意味これは、日本が教育のシステムとカリキュラムを主としてプロイセンに倣って作り上げることにした、20世紀初頭の改革の名残りと見ることもできる。
いずれにせよ、日本人の作者が何か「尊敬する、あるいは好きな外国の人物や文化」と考えた時に、「ドイツ」がよく最初に出てくる理由がこれだ。
ただ君は特に魔法について言っているので・・・
この場合、もう一つ追加する側面がある。アニメが複雑な、深い、明示的に「西洋」の魔法を描きたいと思ったら(単に「かっこいい叫び声を上げる」のではなく)、その第一歩は中世ヨーロッパの錬金術とヘルメス主義だ。
これは驚くべきことではないかも知れない。結局のところ、以下の要素を含む西洋の魔術の資料で今も残っているのはそれしかないからだ:
そして・・・Wikipediaの錬金術師の一覧(※英語)を見てほしい。ざっと国別に並べてみると、ドイツ ― というかドイツになる前の諸王国 ―が、2位以下に大差をつけてトップだ。
念のため言っておくと、この一覧は包括的とは到底言えない。しかも、何世紀もの間ヨーロッパの大部分が錬金術の紛れもない温床だったことはよく知られている。従って必ずしもドイツに多いものというわけではないようだ。
とはいえ、ドイツ生まれの著作家と実験者が全体のうちかなりの部分に貢献したことは確かだ。
以上のことに、最初の段落で触れたドイツに対する概して好意的なイメージが組み合わされば、アニメの魔法言語でドイツ語が定番になる理由も容易に分かるようになる。少なくとも西洋が舞台の魔法に関してはそうだ。
■回答者2(アメリカ)
第2次大戦の模型は日本で人気があり、アニメやマンガの作者の多くも模型とともに育ったので、「メッサーシュミット」とか「パンツァーカンプフヴァーゲン」とかいったファンキーなドイツ語の単語や名前に、人生のごく早い時期から触れている。
英語は現代のポップカルチャーっぽい感じになりがちだし、フランス語はふわふわした貴族的なスタイルと結びついているので、ドイツ語は「シリアス」で珍しい雰囲気をかもしだすのに使われるんだ。他の回答は色々細かい点に立ち入っているが、僕は兵器のような「クール」なもので早くからドイツ語に触れているのが大きな要因だと思っている。
「呪文とかで一番よく使われる言語」に関しては、確かに『Fate/Stay』だとそうだけど、『ドラクエ』の造語の名前とか、『ファイナルファンタジー』後期の手を入れた英語、『真・女神転生』(ペルソナ)の『ヴェーダ』に出てくる神の名前とかよりも一般的とは言えない。
魔法の名前としては、英語のバンド名の方が間違いなく一般的だ。萩原一至のマンガ『BASTARD!!』は主にメタルバンドの名前を使っている:
『ジョジョの奇妙な冒険』もそうだ:
日本のマンガ、アニメ、ゲームがこうした西洋の言語を使いたがる理由については、アジア大陸から言葉を借用してきたという日本の現実の歴史を考えてほしい。
例えば日蓮宗の詠唱、「南無妙法蓮華経」。「南無」はサンスクリットの“Namas (नमः)”の音訳なので、日本語では実際何の意味もない。しかしこの外国語は宗教的な信仰を通じて現実の日本社会で意味を持つようになった。日本人の魔法使いが出てくる日本のフィクションでは、もちろんこの仏教の伝統を利用している。
だから日本のフィクションで呪文に西洋の言語が使われるのも、日本人が「現実世界の魔法」、つまり宗教的実践に使ってきたのと同じ伝統に頼っているんだ。
■回答者3(中国)
(これは日本人の方がうまく答えられるかもしれない。僕は日本人ではないので、論証のため色々な説を参照している。間違いがあったら指摘してほしい。)
一つ重要な要素は、ドイツが近代の(つまり明治維新以降の)日本にいかに深く影響を与えたかを理解することだ。
(※以下、Wikipediaへのリンクは日本語版に張り替えています。)
軍事、医学、法学。これらは近代社会の最も権威のある分野だ。大日本帝国陸軍は戦後解体されたが、日本の法律家と医師の地位には何の混乱も生じなかった。彼らのドイツ語に対する態度は、日本社会における権威ある知についての考え方に影響を及ぼした。
日本のポップカルチャーにドイツ語の単語を見つけたら、それは効率性、正確性、あるいは有効性といった感じを出そうとしたものに見えないだろうか? だとしたら、それは近代日本の形成期におけるドイツの影響の結果かもしれない。
翻訳元:Quora
中二心をくすぐる響きなんですよね。
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■回答者1(ドイツ)
実際は、アニメに出てくる全ての形式の魔法に関して言うなら、英語が余裕でトップだ・・・が、ドイツが有利になる理由がいくつかある。
まず、ドイツは日本人の集合的な想像力の中で非常にポジティブな位置づけを維持している。
自分の過去の回答から一部引用すると:日本人は自国の文化とドイツの文化との間に、ある好意的な類縁性を感じている。例として品質への配慮、ルールを重んじること、清潔さ、時間厳守、形式尊重、謹厳実直でビジネスライクな態度・・・そして、一般に控えめで内気な振る舞いといったものが挙げられる。
これに加えて、ドイツの文化的要素、例えば哲学者、作曲家、詩人、作家等は、日本の学校のカリキュラムで非常に目立つ形で、好意的に取り上げられている。ある意味これは、日本が教育のシステムとカリキュラムを主としてプロイセンに倣って作り上げることにした、20世紀初頭の改革の名残りと見ることもできる。
いずれにせよ、日本人の作者が何か「尊敬する、あるいは好きな外国の人物や文化」と考えた時に、「ドイツ」がよく最初に出てくる理由がこれだ。
ただ君は特に魔法について言っているので・・・
この場合、もう一つ追加する側面がある。アニメが複雑な、深い、明示的に「西洋」の魔法を描きたいと思ったら(単に「かっこいい叫び声を上げる」のではなく)、その第一歩は中世ヨーロッパの錬金術とヘルメス主義だ。
参考:
「ヘルメス主義(ヘルメスしゅぎ、英: Hermeticism)とは、哲学的・宗教的思想の総称である。主として、ヘルメス・トリスメギストスという著者に仮託された神秘主義的文献ヘルメス文書に基づいている。ヘルメス主義は、ヘルメス文書で扱う占星術、錬金術、神智学、自然哲学を含む。」
ヘルメス主義 - Wikipedia
これは驚くべきことではないかも知れない。結局のところ、以下の要素を含む西洋の魔術の資料で今も残っているのはそれしかないからだ:
- 魔法陣や絵文字、悪魔や精霊や何やといった、豊かで深遠で、高度に視覚的に活用できる様式的「言語」
- 現代の視聴者が不審に思わないように、十分「遠い」そして「由緒ある」感じのする古いものであること
そして・・・Wikipediaの錬金術師の一覧(※英語)を見てほしい。ざっと国別に並べてみると、ドイツ ― というかドイツになる前の諸王国 ―が、2位以下に大差をつけてトップだ。
念のため言っておくと、この一覧は包括的とは到底言えない。しかも、何世紀もの間ヨーロッパの大部分が錬金術の紛れもない温床だったことはよく知られている。従って必ずしもドイツに多いものというわけではないようだ。
とはいえ、ドイツ生まれの著作家と実験者が全体のうちかなりの部分に貢献したことは確かだ。
以上のことに、最初の段落で触れたドイツに対する概して好意的なイメージが組み合わされば、アニメの魔法言語でドイツ語が定番になる理由も容易に分かるようになる。少なくとも西洋が舞台の魔法に関してはそうだ。
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■回答者2(アメリカ)
第2次大戦の模型は日本で人気があり、アニメやマンガの作者の多くも模型とともに育ったので、「メッサーシュミット」とか「パンツァーカンプフヴァーゲン」とかいったファンキーなドイツ語の単語や名前に、人生のごく早い時期から触れている。
英語は現代のポップカルチャーっぽい感じになりがちだし、フランス語はふわふわした貴族的なスタイルと結びついているので、ドイツ語は「シリアス」で珍しい雰囲気をかもしだすのに使われるんだ。他の回答は色々細かい点に立ち入っているが、僕は兵器のような「クール」なもので早くからドイツ語に触れているのが大きな要因だと思っている。
「呪文とかで一番よく使われる言語」に関しては、確かに『Fate/Stay』だとそうだけど、『ドラクエ』の造語の名前とか、『ファイナルファンタジー』後期の手を入れた英語、『真・女神転生』(ペルソナ)の『ヴェーダ』に出てくる神の名前とかよりも一般的とは言えない。
魔法の名前としては、英語のバンド名の方が間違いなく一般的だ。萩原一至のマンガ『BASTARD!!』は主にメタルバンドの名前を使っている:
『ジョジョの奇妙な冒険』もそうだ:
日本のマンガ、アニメ、ゲームがこうした西洋の言語を使いたがる理由については、アジア大陸から言葉を借用してきたという日本の現実の歴史を考えてほしい。
例えば日蓮宗の詠唱、「南無妙法蓮華経」。「南無」はサンスクリットの“Namas (नमः)”の音訳なので、日本語では実際何の意味もない。しかしこの外国語は宗教的な信仰を通じて現実の日本社会で意味を持つようになった。日本人の魔法使いが出てくる日本のフィクションでは、もちろんこの仏教の伝統を利用している。
だから日本のフィクションで呪文に西洋の言語が使われるのも、日本人が「現実世界の魔法」、つまり宗教的実践に使ってきたのと同じ伝統に頼っているんだ。
■回答者3(中国)
(これは日本人の方がうまく答えられるかもしれない。僕は日本人ではないので、論証のため色々な説を参照している。間違いがあったら指摘してほしい。)
一つ重要な要素は、ドイツが近代の(つまり明治維新以降の)日本にいかに深く影響を与えたかを理解することだ。
(※以下、Wikipediaへのリンクは日本語版に張り替えています。)
- 大日本帝国陸軍は近代戦と参謀の技術をプロイセンの軍人ヤーコプ・メッケル(日本での任期中は少佐)に教わった。その影響は彼の没後にも及んだ。
- 近代(ヨーロッパ)医学を日本に紹介した初めての医師はカスパル・シャムベルゲル、ドイツ人だ。次がフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト、これもドイツ人。シーボルトの医学校・鳴滝塾に学んだ伊東玄朴は幕府のもとで医学研究所(※西洋医学所)を始め、これが後に東京大学医学部となり、日本の開業医の中核となる人々に教育を施した。第2次大戦の終わりまで、日本の医師はドイツ語を学ぶのが必須だった。日本の処方箋は長い間ドイツ語で書かれていた。
- 1896年の日本の民法は、ドイツ民法の第一草案とフランス民法に基づくものだった。日本の法律 - Wikipedia。近代日本の法学では、例えば法益(Rechtsgut)といった多くの法概念がドイツ法学に由来する。1889年の大日本帝国憲法も、ドイツの法学者ヘルマン・ロエスレルに大きく影響を受けた。
軍事、医学、法学。これらは近代社会の最も権威のある分野だ。大日本帝国陸軍は戦後解体されたが、日本の法律家と医師の地位には何の混乱も生じなかった。彼らのドイツ語に対する態度は、日本社会における権威ある知についての考え方に影響を及ぼした。
日本のポップカルチャーにドイツ語の単語を見つけたら、それは効率性、正確性、あるいは有効性といった感じを出そうとしたものに見えないだろうか? だとしたら、それは近代日本の形成期におけるドイツの影響の結果かもしれない。
翻訳元:Quora
中二心をくすぐる響きなんですよね。
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外国人「アニメによく出てくる日本についての誤解を解く」
外国人「アニメと現実の日本の最大の違いは何?」

クリエーターのためのネーミング辞典 (一般向辞典)
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後は英語のやつとの差別化を図りたいとか
作者がドイツ好きだとか
あとイメージとして軍人国家って感じもあると思うので
戦闘で強いってイメージがあるからとか?