海外Q&Aサイトの「日本人に言論と表現の自由ってあるの?」という質問から、回答をご紹介。翻訳していて「何だかなあ」と思った回答者3にコメントを書いてみたら返信をいただいたのですが、さて・・・
■回答者1
絶対的にイエス。事実、日本人は絶対的な言論の自由が憲法によって保障されていて、これは彼らが多くの点で、例えばヨーロッパの多くの国よりも多くの言論の自由を手にしているということだ。どのような芸術を制作できるかを制限する法はいくつかあるが、大半の人は他の国と比べたら相対的に緩いと言うだろう。公務員のような人たちも、政府の機密を開示させないための(最近できた)法律によって制限を受けている。
最後に、日本の名誉毀損法は驚くほど厳しく、他人の名誉を毀損することを言うと(たとえ本当のことであっても!)、明白な公益性があるのでなければ、面倒なことに、実際に刑事事件になる場合がある。
また会社で働いているなら(大半の人はそうだ)、自分が言ったことに会社がどう反応するか、自分の知っている人たちはどう反応するかを考える必要があるだろう。しかし少なくとも法律上は、日本人には非常に強い言論の自由の権利がある。
■回答者2(アメリカ)
日本国憲法第3章第21条によると:
合衆国憲法修正第1条と比較してみると:
私のような大多数のアメリカ人にとって、言論の自由は、他人にとって不快なものであろうがなかろうが絶対的な権利だ。米国で反対される唯一の言論は、他人に実害を与えるものか、他人の権利を制限するものだけだ。
しかし最近、米国のソーシャル・ジャスティス・ウォーリアー(SJW)の間では、ポリティカル・コレクトネス(PC)、「セーフスペース」、「ヘイトスピーチ」を理由に、言論の自由に反対する活動が増加している。以下は西洋で、言論の自由を実践したために、起訴や投獄はされないにしても非難された事例だ:
これについて私の個人的な意見は・・・ミレニアル世代の、特にSJWを自認する人々は、非常に怒りっぽくてすぐに気分を害し、上述のすべての国の文化を破壊しつつあるほどだ。
このために、コメディは緩慢で苦痛にみちた死を迎えつつあると思う。ところで、コメディは言論の自由にとって最後の砦だ。
白人男性が非白人を描いているという理由で、ステレオタイプに満ちたシチュエーション・コメディのアニメが人の気分を害すると判断されるというなら、アニメのコメディはどうすればいいんだ?スタンダップコメディアンが観客のヤジで持ちネタを奪われて、そういう観客の怒りとヘイトに配慮するようになったら、スタンダップコメディアンはどうすればいいんだ?
今では多くのコメディアンが大学のキャンパスでの公演を避けているが、理由のないことではない。
私たちが今日目にしているのは、ポリティカル・コレクトネスの発狂だ。他人に配慮することと、何を言うべきで何を言うべきでないかを他人に強制するのはまったく別のことだ。
5年以上前に画期的で面白いと思われていたことが、今では人の気分を害するとかヘイトだとか思われているんだ。
■回答者3(アメリカ)
手短に答えると「ノー」。憲法で保障されているという回答を書いている人たちに言っておくと:まあ、そうだな、米国独立宣言には「すべての人は平等に作られている」と書かれている。学校でも習うし、米国政府の設立の原則でもある。これは「米国ではすべての人は平等だ」と定めてるんだよな! 何? 違う? そんな単純な話じゃないって? ふーん・・・
まず、言論と表現の自由とは何かを定義しよう。そして次に、それが日本には(あまり)ない理由を示そう。
最大の言論の自由があると広く思われている、米国のような国を例にとってみよう。つまり大統領でさえ言いたいことを何でも言うことができて、それは現実に基づいていたり事実に裏付けられていたりする必要はこれっぽっちもない。ヘイトスピーチも許されていて、抗議で旗を燃やしたりする表現も合法で、また周知のとおり、どんな意見であろうと表現する権利があると誰もが思っている(これには、人は意見によって判断されるべきではないという含意がある)。抗議集会が何十年も繰り返し警察によって解散させられ、ひどい仕打ちを受けているという事実は気にするな。原則として、アメリカは世界で最も自由な国だと思われている。
これに近い事例はカナダだろう。大体は米国と同じだが、ただしカナダ式の真に礼儀正しい仕方で、ヘイトスピーチは言論の自由として保護されないと決定している。米国とは違って、人は、なんらかの支持を受けていて議論を前に進めることになる極端な意見を持つ権利はあるが、単なるやかましいアホになる権利はないわけだ。(歌)おおカナダ~!
しかしこうした自由は何のためにあるのか? 単にYouTubeの動画のコメント欄を雄弁で埋め尽くせるように? Facebookで「活発な議論」を交わせるように? まあ、言論と表現の自由の究極の理由は、おそらく3つの点に帰着する:
しかし、もしある日本人がこうした危険を冒そうと望むなら、理屈としては可能ではないのか? できないのだ。安倍晋三首相(写真右、日本の第2次大戦の拡張主義の旗の後ろ)が権力を握って以来(安倍は精神錯乱がより少なく、より主流派のトランプだ)、その政府はあらゆる異論に影響を及ぼし、憲法を書き直すといった大胆な行動に向けて準備するため、権力基盤を固めてきた。2012年の初期草案では、日本国民が「譲渡できない権利」を持つ代わりに政府が定めた「適当な義務と責任」を負うように憲法を書き換えている。
日本語での言葉遣いはもっと微妙なのかもしれないが、この書き換えは、人がどのような権利を持つかを決める広範な権力を首相に持たせるものだというのが事実だ。これは彼の右翼的で国家主義的な政府が推し進めてきた方向性を暗示するものにすぎない。自由と法の支配についての日本のダブルスタンダード | The Diplomat(英語)
では、今のところこの政府がもたらした、現実に目に見える影響は何だろうか? 安倍が権力を握ったとき、日本は報道の自由の点で世界11位だった。私は2011年に日本にいて福島の核災害についてNHKの報道を見たのを覚えているが、周りの日本人は皆、NKHは政府にコントロールされているからTVのニュースは信じないほうがいいと言っていた。彼らは最初の数日間の報道よりも事態はずっと悪くなっていると信じていた。はたして時が経ち、国際メディアがやって来て情報収集を始めると、政府は以前の主張を次第に、一つまた一つと取り下げた。原子炉がいかに安全かを「誇張して述べて」いた。状況がいかに制御下にあるかを「誤って述べて」いた。等々。
その1年後、中学校で使われる日本の主要な教科書のすべてが、第2次大戦中の日本人による戦時性奴隷についての一切の言及を削除した。(文部科学大臣を任命したのは安倍だ。)これが言論の自由か? せめて問題について知って、自分でそれ以上のことを調べられるようになる自由か? 国連特別報告者、報道の自由の侵害について日本を非難 | World news | The Guardian(英語)
その1年後、安倍がコントロールする日本の国会は、「国家機密法案」(※特定秘密保護法案)をたった2週間で強行採決し、第一草案を正式な法にした。これにより安倍首相とその政府は、事実上あらゆる公的な情報を理由も明示することなく「国家の安全保障にとって危険」だと宣言し、その情報を共有した者は誰でも10年間投獄できるようになった。テロが理由だ。これは広く非難された。日本は報道の自由ランキングで、タンザニアのような国々よりも下の62位に落ちた。日本の秘密保護法と国際標準(英語、PDF)
2013年から2014年にかけて、安倍政権と首相自らが、朝日新聞に対して一連の攻撃を仕掛けた。日本のメディアの報道がこの政府にとって致命的になったことは一度もなかったのだが、同紙は国家主義的で保守的な政府にとって左寄りのカウンターパートに最も近い存在だった。これは首相が「この誤報が(日本に)大きな害を与えたことは事実だ」(強調は引用者)と言って、同紙の記者に辞任するよう圧力をかけるに至り(このように公的に深刻な恥をかかせることは、日本では今でも自殺の原因となることが多い)、頂点に達した。
彼らは特に同紙の50年前のニュース記事を重視した。この記事に関しては、一次ソースとなった人物が、「従軍慰安婦」について自らの経験を語る際にいくつかの細部を捏造していたことを認めた。これによって、まるで彼の話の全体が嘘であるかのように、そして主要な要素を裏付ける何万という生きた被害者と目撃者が存在しないかのようになった。ところが日本政府は性奴隷が起こったことを一切否定しようとしてこれを利用した。本質的に、この件について語ることは誰も許されていない。政府は同紙に記事を撤回させ、新たな国家機密法で脅して効果的に口をつぐませた。政府がジャーナリストに圧力をかけたのはこの時だけではない。日本の報道の自由に対する抑え込み – Foreign Policy(英語)
安倍政権はここ数年にわたってTVのニュース記者たちにも思い通りにさせようと多くの圧力をかけてきて、多くの記者が黙って辞めるか、理由を言わずに他の分野に移った。しかし非常に短期的には、日本の3つの大手TV局のおもだったTVキャスター3人が離任し、それは報道を自己検閲するよう圧力をかけられたからだと実際に言っている。日本のTVキャスター、政治的圧力の要求の中で職を失う | World news | The Guardian(英語)彼らは政府が嘘をついてきた問題について偏向のない報道をしようとしてきた。従軍慰安婦。福島。中国との領土紛争。憲法の書き直し。日本の軍国化。日本は報道の自由ランキングで72位に転落した。
実際に立ち上がって、自分は言いたいことが言えない状態だと認めるというのは、日本の文化からの著しい逸脱だ。自分の国で誰でも知っている人物3人が揃って立ち上がり、「みんなが公式に言っていることは信じてはいけない」と言うのを想像してほしい。日本最大の放送局・NHKの会長は、安倍晋三自らがその座に就任させた。彼はメディアに対し公然とこう語っている。「政府が右と言えば左とは言えない」。
ということで、日本人に言論と表現の自由はあるか? まあ、伝統や、同調圧力や、自分のキャリアや、話すべきでないと「誰もが知っている」ことを話すという居心地の悪さや、反逆罪で訴えられて10年間投獄されるのを気にしないのなら・・・うーむ、もちろんあるとも。憲法に書いてある。
翻訳元:Quora
目下体調不良中なのと、正直話しても無駄な人だと思ったので、これ以上のレスバトルは回避です。
2018-11-01 19:38追記:翻訳元のリンクをミスっていたので修正しました。猛省します・・・
2018-11-05 20:17追記:翻訳元(Quoraのコメント欄)が見える・見えないで混乱を招いてしまっていますが、コメントはQuoraにログインした状態でないと表示されないようです。管理人のPCスキルがゴミなためご迷惑をおかけしました。いろいろダメすぎる・・・
一応、該当箇所のスクショを置いておきます&翻訳に回答者3の返信を追加しました。
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この国に言論の自由はあるのか―表現・メディア規制が問いかけるもの (岩波ブックレット (No.630))
■回答者1
絶対的にイエス。事実、日本人は絶対的な言論の自由が憲法によって保障されていて、これは彼らが多くの点で、例えばヨーロッパの多くの国よりも多くの言論の自由を手にしているということだ。どのような芸術を制作できるかを制限する法はいくつかあるが、大半の人は他の国と比べたら相対的に緩いと言うだろう。公務員のような人たちも、政府の機密を開示させないための(最近できた)法律によって制限を受けている。
最後に、日本の名誉毀損法は驚くほど厳しく、他人の名誉を毀損することを言うと(たとえ本当のことであっても!)、明白な公益性があるのでなければ、面倒なことに、実際に刑事事件になる場合がある。
また会社で働いているなら(大半の人はそうだ)、自分が言ったことに会社がどう反応するか、自分の知っている人たちはどう反応するかを考える必要があるだろう。しかし少なくとも法律上は、日本人には非常に強い言論の自由の権利がある。
■回答者2(アメリカ)
日本国憲法第3章第21条によると:
- 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
合衆国憲法修正第1条と比較してみると:
- 連邦議会は、国教を定めまたは自由な宗教活動を禁止する法律、言論または出版の自由を制限する法律、ならびに国民が平穏に集会する権利および苦痛の救済を求めて政府に請願する権利を制限する法律は、これを制定してはならない。
私のような大多数のアメリカ人にとって、言論の自由は、他人にとって不快なものであろうがなかろうが絶対的な権利だ。米国で反対される唯一の言論は、他人に実害を与えるものか、他人の権利を制限するものだけだ。
しかし最近、米国のソーシャル・ジャスティス・ウォーリアー(SJW)の間では、ポリティカル・コレクトネス(PC)、「セーフスペース」、「ヘイトスピーチ」を理由に、言論の自由に反対する活動が増加している。以下は西洋で、言論の自由を実践したために、起訴や投獄はされないにしても非難された事例だ:
- カナダ
- ジョーダン・B・ピーターソン教授は、カナダの法律C-16(※トランスジェンダーの権利を守る法律)に断固として反対したため、「問題の多い人物」と判断された。
- カナダでは間違った代名詞を使うと罰金または懲役に課される可能性がある。
- コメディアンのマイク・ワードは、トリーチャー・コリンズ症候群(※顎顔面形態の不調和が特徴的な症状として見られる遺伝子疾患。→Wikipedia)の子供についてのジョークを言ったため、カナダ人権審判所で審問を受けた。
- 英国
- YouTuberの“Count Dankula”は、「ユダヤ人をガス殺しろ」と言ったらナチス式の敬礼をするように犬に仕込んだため、英国で有罪判決を受けた。
- ある男性はスピード違反取り締まりカメラに向かって中指を突き立てて投獄された。レーザージャマー(※警察のスピード探知レーザーを撹乱する装置)も使っていたという報道もある。
- 米国
- ミレニアル世代のSJWたちは大学の弁論大会を、特にスピーカーが保守、リバタリアン、または右翼の場合、強制的に中止に追い込んでいる。
- シンプソンズの声優、ハンク・アザリアはSJWたちとポリティカル・コレクトネスの圧力で、コルベアのレイト・ナイト・ショーに出演し、アプー・ナハサピーマペティロンを演じたことを謝罪させられた(私の予測では、これによりアプーは作り直しになるか潰される可能性がある)。
参考:アプー・ナハサピーマペティロン
出所:アプー・ナハサピーマペティロン - Wikipedia(英語)
これについて私の個人的な意見は・・・ミレニアル世代の、特にSJWを自認する人々は、非常に怒りっぽくてすぐに気分を害し、上述のすべての国の文化を破壊しつつあるほどだ。
このために、コメディは緩慢で苦痛にみちた死を迎えつつあると思う。ところで、コメディは言論の自由にとって最後の砦だ。
白人男性が非白人を描いているという理由で、ステレオタイプに満ちたシチュエーション・コメディのアニメが人の気分を害すると判断されるというなら、アニメのコメディはどうすればいいんだ?スタンダップコメディアンが観客のヤジで持ちネタを奪われて、そういう観客の怒りとヘイトに配慮するようになったら、スタンダップコメディアンはどうすればいいんだ?
今では多くのコメディアンが大学のキャンパスでの公演を避けているが、理由のないことではない。
私たちが今日目にしているのは、ポリティカル・コレクトネスの発狂だ。他人に配慮することと、何を言うべきで何を言うべきでないかを他人に強制するのはまったく別のことだ。
5年以上前に画期的で面白いと思われていたことが、今では人の気分を害するとかヘイトだとか思われているんだ。
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外国人「頭おかしいレベルのポリコレの例を教えて」→「OKサインは人種差別らしいぞ」
外国人「頭おかしいレベルのポリコレの例を教えて」(その2)
■回答者3(アメリカ)
手短に答えると「ノー」。憲法で保障されているという回答を書いている人たちに言っておくと:まあ、そうだな、米国独立宣言には「すべての人は平等に作られている」と書かれている。学校でも習うし、米国政府の設立の原則でもある。これは「米国ではすべての人は平等だ」と定めてるんだよな! 何? 違う? そんな単純な話じゃないって? ふーん・・・
まず、言論と表現の自由とは何かを定義しよう。そして次に、それが日本には(あまり)ない理由を示そう。
最大の言論の自由があると広く思われている、米国のような国を例にとってみよう。つまり大統領でさえ言いたいことを何でも言うことができて、それは現実に基づいていたり事実に裏付けられていたりする必要はこれっぽっちもない。ヘイトスピーチも許されていて、抗議で旗を燃やしたりする表現も合法で、また周知のとおり、どんな意見であろうと表現する権利があると誰もが思っている(これには、人は意見によって判断されるべきではないという含意がある)。抗議集会が何十年も繰り返し警察によって解散させられ、ひどい仕打ちを受けているという事実は気にするな。原則として、アメリカは世界で最も自由な国だと思われている。
これに近い事例はカナダだろう。大体は米国と同じだが、ただしカナダ式の真に礼儀正しい仕方で、ヘイトスピーチは言論の自由として保護されないと決定している。米国とは違って、人は、なんらかの支持を受けていて議論を前に進めることになる極端な意見を持つ権利はあるが、単なるやかましいアホになる権利はないわけだ。(歌)おおカナダ~!
しかしこうした自由は何のためにあるのか? 単にYouTubeの動画のコメント欄を雄弁で埋め尽くせるように? Facebookで「活発な議論」を交わせるように? まあ、言論と表現の自由の究極の理由は、おそらく3つの点に帰着する:
- 反動を恐れることなく指導者を批判できること
- 政府が何をやっているか、そして自分がどのように統治されているかについて、情報を広めることができること
- 公的メディアの情報源に対し可能なかぎり透明性の高い政府を持ち、それによって政府が以上2つの義務を果たせるようにすること
関連記事:
外国人「日本のエリート層の大半はサムライの名字を持っている。日本は今もサムライの子孫が支配する国だ」
しかし、もしある日本人がこうした危険を冒そうと望むなら、理屈としては可能ではないのか? できないのだ。安倍晋三首相(写真右、日本の第2次大戦の拡張主義の旗の後ろ)が権力を握って以来(安倍は精神錯乱がより少なく、より主流派のトランプだ)、その政府はあらゆる異論に影響を及ぼし、憲法を書き直すといった大胆な行動に向けて準備するため、権力基盤を固めてきた。2012年の初期草案では、日本国民が「譲渡できない権利」を持つ代わりに政府が定めた「適当な義務と責任」を負うように憲法を書き換えている。
日本語での言葉遣いはもっと微妙なのかもしれないが、この書き換えは、人がどのような権利を持つかを決める広範な権力を首相に持たせるものだというのが事実だ。これは彼の右翼的で国家主義的な政府が推し進めてきた方向性を暗示するものにすぎない。自由と法の支配についての日本のダブルスタンダード | The Diplomat(英語)
では、今のところこの政府がもたらした、現実に目に見える影響は何だろうか? 安倍が権力を握ったとき、日本は報道の自由の点で世界11位だった。私は2011年に日本にいて福島の核災害についてNHKの報道を見たのを覚えているが、周りの日本人は皆、NKHは政府にコントロールされているからTVのニュースは信じないほうがいいと言っていた。彼らは最初の数日間の報道よりも事態はずっと悪くなっていると信じていた。はたして時が経ち、国際メディアがやって来て情報収集を始めると、政府は以前の主張を次第に、一つまた一つと取り下げた。原子炉がいかに安全かを「誇張して述べて」いた。状況がいかに制御下にあるかを「誤って述べて」いた。等々。
関連記事:
外国人「福島の原発事故があったけど、今の日本はどれくらい安全なの?」
その1年後、中学校で使われる日本の主要な教科書のすべてが、第2次大戦中の日本人による戦時性奴隷についての一切の言及を削除した。(文部科学大臣を任命したのは安倍だ。)これが言論の自由か? せめて問題について知って、自分でそれ以上のことを調べられるようになる自由か? 国連特別報告者、報道の自由の侵害について日本を非難 | World news | The Guardian(英語)
その1年後、安倍がコントロールする日本の国会は、「国家機密法案」(※特定秘密保護法案)をたった2週間で強行採決し、第一草案を正式な法にした。これにより安倍首相とその政府は、事実上あらゆる公的な情報を理由も明示することなく「国家の安全保障にとって危険」だと宣言し、その情報を共有した者は誰でも10年間投獄できるようになった。テロが理由だ。これは広く非難された。日本は報道の自由ランキングで、タンザニアのような国々よりも下の62位に落ちた。日本の秘密保護法と国際標準(英語、PDF)
2013年から2014年にかけて、安倍政権と首相自らが、朝日新聞に対して一連の攻撃を仕掛けた。日本のメディアの報道がこの政府にとって致命的になったことは一度もなかったのだが、同紙は国家主義的で保守的な政府にとって左寄りのカウンターパートに最も近い存在だった。これは首相が「この誤報が(日本に)大きな害を与えたことは事実だ」(強調は引用者)と言って、同紙の記者に辞任するよう圧力をかけるに至り(このように公的に深刻な恥をかかせることは、日本では今でも自殺の原因となることが多い)、頂点に達した。
彼らは特に同紙の50年前のニュース記事を重視した。この記事に関しては、一次ソースとなった人物が、「従軍慰安婦」について自らの経験を語る際にいくつかの細部を捏造していたことを認めた。これによって、まるで彼の話の全体が嘘であるかのように、そして主要な要素を裏付ける何万という生きた被害者と目撃者が存在しないかのようになった。ところが日本政府は性奴隷が起こったことを一切否定しようとしてこれを利用した。本質的に、この件について語ることは誰も許されていない。政府は同紙に記事を撤回させ、新たな国家機密法で脅して効果的に口をつぐませた。政府がジャーナリストに圧力をかけたのはこの時だけではない。日本の報道の自由に対する抑え込み – Foreign Policy(英語)
安倍政権はここ数年にわたってTVのニュース記者たちにも思い通りにさせようと多くの圧力をかけてきて、多くの記者が黙って辞めるか、理由を言わずに他の分野に移った。しかし非常に短期的には、日本の3つの大手TV局のおもだったTVキャスター3人が離任し、それは報道を自己検閲するよう圧力をかけられたからだと実際に言っている。日本のTVキャスター、政治的圧力の要求の中で職を失う | World news | The Guardian(英語)彼らは政府が嘘をついてきた問題について偏向のない報道をしようとしてきた。従軍慰安婦。福島。中国との領土紛争。憲法の書き直し。日本の軍国化。日本は報道の自由ランキングで72位に転落した。
実際に立ち上がって、自分は言いたいことが言えない状態だと認めるというのは、日本の文化からの著しい逸脱だ。自分の国で誰でも知っている人物3人が揃って立ち上がり、「みんなが公式に言っていることは信じてはいけない」と言うのを想像してほしい。日本最大の放送局・NHKの会長は、安倍晋三自らがその座に就任させた。彼はメディアに対し公然とこう語っている。「政府が右と言えば左とは言えない」。
ということで、日本人に言論と表現の自由はあるか? まあ、伝統や、同調圧力や、自分のキャリアや、話すべきでないと「誰もが知っている」ことを話すという居心地の悪さや、反逆罪で訴えられて10年間投獄されるのを気にしないのなら・・・うーむ、もちろんあるとも。憲法に書いてある。
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↑コメント1(管理人)
興味深い回答だ。まず、あなたが言及している事実の中の誤りを指摘しなければならない。例えば福島の災害のときの政権(実際には安倍ではなく民主党の菅と野田だ)、日本政府がいわゆる従軍慰安婦の存在を否定しようとしていること(日本政府は売春宿の運営に日本軍が関与していたことを認めている)、等。また「5%の支配階級」の証拠も教えてもらいたい。
ともあれ、この回答が興味深いと思ったのは、そうした事実が私とは異なる視点から記述されているからだ。しかしあなたは朝日新聞についてはあまり知らないようだ。彼らは今も昔も安倍首相に対してきわめて攻撃的で、幹部の一人は「安倍の葬式はうちで出す」とまで言ったとされ、別の人物は「安倍叩きは社是だ」と言った。もちろんこれは、政府による言論弾圧があったとしてそれを正当化するものではないが、彼らが安倍の専制と戦う高潔で非の打ち所のないジャーナリストだと思うのは実際ナイーブというものだろう。
あなたはまた朝日がフェイク記事を取り消したことに言及し、それが「50年前のニュース記事」だということを強調し、安倍が同紙を攻撃するために昔の些細な問題を取り上げたとほのめかしている(また正確を期するために付け加えると、その記事が出たのは1982年、50年ではなく36年前だ)。私の理解する限り、事実はまったく逆だ。問題の記事は、いわゆる従軍慰安婦問題のまさに根源で、実際に日本に害を与え、日本と韓国の関係を30年以上にわたってめちゃくちゃにしてきたものだ。
最近、朝日のサイトにある捏造を認めた記事に、検索エンジンのクローラを回避するためのメタタグが埋め込まれていたことが分かった。これは彼らがどういう種類のメディアで、捏造についてどう考えているかをよく表わしていると思う。
↑回答者3
君の言っていることの中で、いくつか誤りを指摘しなければならない。第一に、福島のときに安倍が責任者だったとは私は言っていない。「NKHは政府にコントロールされている」と言ったんだ。その前に安倍について言っているのが混乱を招いたなら謝る。とはいえ、あの災害の後の対応のまずさについて言うなら・・・福島の災害の責任者は誰か? | The Japan Times(英語)
2点目:君とは従軍慰安婦について議論できそうにない。君がどれだけ現実から目を背けているか、言葉遣いからよく分かる。あれは政府による拉致と強制に基づく強制的なレイプ収容所だ。安倍はこれを否定している。彼は、「われわれは孤独な兵士たちに喜んで身を売る女性たちに手段を提供した」という場合を除いて、「関与を認め」てはいない。責任を逃れるための完全な捏造であり、事実の歪曲だ。安倍、戦時中の性についての資料を拒否 - The New York Times(英語)
3点目:朝日新聞の引用についてはソースも書いてほしかったな。安倍のようなレイシストで外国人嫌いの犯罪者に対し、力強く立ち上がった男たちには敬意を表したい。安倍はトランプやプーチンと同じぐらい悪い奴だ。しかし、君は朝日新聞について自分なりの描写をするために、同紙への攻撃に関する多くの問題について私が回答に書いたことの多くを完全に無視している。まるで事実が起こらなかったかのように、件の記事を「フェイク」とまで言っているが、しかし清治サン(※吉田清治)が報告したことはすべて実際に起こったというのが事実だ・・・事実であることを彼に個人的に確認することは今となってはできない、というだけだ。
清治が存命中に2冊の本を書き、反証されたり疑われたりしなかったというのは実に興味深いね。彼の死後になってやっと日本政府は記事と朝日新聞を攻撃し、撤回を要求したんだ。朝日新聞は清治の話が事実であることを証明できなかったため、ジャーナリズムとしての一貫性から記事を撤回した。それ以上のことではない。40年後にインタビューを試みたわけでもない。彼らは物証を見つけられなかったということはずっと認めていて、最初の記事にミスリーディングなものは何もない。これで記事がフェイクになるわけではないし、従軍慰安婦がフェイクになるわけでもない。それどころか、実際、政府の陰謀論が増すだけだ。
この問題について書いているジャーナリストに対する政府による迫害と圧力についての、別の著者へのインタビュー:戦争の書き直し、日本の右翼が新聞を攻撃する - The New York Times(英語)
従軍慰安婦の歴史。何百という引証と、多くの国での何千という目撃者の証言がある。日本の一つの新聞が政府の強い影響力に対して反撃できなかったことに影響を受けるものではまったくない:従軍慰安婦 – Wikipedia(英語)どの文章も、後に付いている番号をクリックすればソースが見られる。これでも朝日新聞の記事がみんなに「誤った情報を伝えた」と言って非難できるのか。
4点目:君はこの記事が韓国との関係が悪化した原因だと示唆しているが、これは救いがたいまでに実態からかけ離れている。日本は韓国人を侵略し虐待したのだ。日本人は韓国人を奴隷化し、彼らの文化と言語を消し去ろうとした。私は韓国で子供たちに教えていたが、彼らは日本を憎んで成長する。祖父母が戦争中に日本人にされたことを話すからだ。関連記事:
外国人「なぜ韓国は学校で子供たちに日本を憎むように教えているの?」
戦争は帝国主義と人種的優越性の考えに基づいていた。これこそが韓国との関係を悪化させた原因で、今日の日本の人々はこれを分かっていない。兵士たちがやった惨事を報道するメディアを非難するのは、アメリカ政府がベトナムで働いた悪事の一つだ。やれやれ、アメリカを例に出したくはないが、しかし私たちはベトナムで自分たちが関わった惨事を認めている。日本人は韓国に、中国に、そしてアジアの他の国々に、同じことをする必要がある。さもないと人は決して前に進めない。例外なしに、無条件に罪を認め謝罪する必要がある。それ以下のことでは今と同じと見られるだろう。つまり、体面を保とうと画策する真摯さの足りない試みだと。
以下は日韓関係と、安倍が従軍慰安婦問題への対応を拒否し朝日新聞を追求したことで韓国人がいかに苦しんだかについての、良質のインタビューだ。登場する教授は日本の大学の人で、朝日新聞が記事を撤回した理由と、それによって事実が変わるわけではない理由を説明している。
ASIA NOW: Does the Asahi Shimbun retraction mean there were no comfort women? - YouTube
従軍慰安婦に関してここで言いたいのは以上だ。従軍慰安婦を否定するような考えは、一切受け入れることを拒否する。別のスレで取り上げてもいい。
↑コメント1(管理人)
有益な資料を含む返信をありがとう。正直、「君とは従軍慰安婦について議論できそうにない」と宣言して、それから従軍慰安婦についての長い演説を始めることで、あなたが何をしたいのか分からない。私は議論は好きだけれど、反論を一切受け付けず意見を押し付けられるのは好きじゃない。
とはいえ、あなたが自分と意見の違う人には一切耳を傾けないタイプの人でないのなら、日本についてもっと幅広い種類のニュースソースを、さらに可能なら、いささか偏向した英語メディアを通じてではなく日本語で直接読むことを強く勧める。そうすれば各ソースの信頼性についてもっとよく判断できるようになるだろう。
↑回答者3(※2018-11-05追加)
君は今回も私の投稿の大事な点を見逃している。日本人の著者、教授、編集者、ニュースキャスターたちが、日本のメディアがいかに偏向し信用ならないかを揃って指摘しているという点だ。
私は多くの意見を受け入れている。しかし世界的に合意されている事柄を否定する意見、例えば「ホロコーストはなかった」「トランプは史上最高の大統領だ」、あるいは「従軍慰安婦は自発的な売春婦だ」といった意見は、無知で侮辱的なものだ。そうした意見は口外しないでおいてくれると有り難い。そんな話をしているには人生はあまりに短い。
翻訳元:Quora
目下体調不良中なのと、正直話しても無駄な人だと思ったので、これ以上のレスバトルは回避です。
2018-11-01 19:38追記:翻訳元のリンクをミスっていたので修正しました。猛省します・・・
2018-11-05 20:17追記:翻訳元(Quoraのコメント欄)が見える・見えないで混乱を招いてしまっていますが、コメントはQuoraにログインした状態でないと表示されないようです。管理人のPCスキルがゴミなためご迷惑をおかけしました。いろいろダメすぎる・・・
一応、該当箇所のスクショを置いておきます&翻訳に回答者3の返信を追加しました。
関連記事:
外国人「日本で南京大虐殺について話しても大丈夫?」
外国人「日本で天皇を批判したら刑務所行きになる?」
外国人「なぜ日本の学者は竹島/独島が韓国の領土だと主張しているの?」
この国に言論の自由はあるのか―表現・メディア規制が問いかけるもの (岩波ブックレット (No.630))
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